花会式

 去る五日、奈良西の京、薬師寺の花会式(修二会)(※1)が終わりました。修二会は二月(旧暦)に行われる国家の繁栄と五穀豊穣、万民豊楽などを祈る行事で、東大寺二月堂が有名ですが、こちらが若狭井から香水を汲み上げる儀式に由来して「お水取り」と呼ばれるのに対し、堀河天皇の皇后の病気平癒祈願が叶ったことで、全快を祝い10種類の造花を薬師如来に供えられたのが現代に受け継がれ「花会式」と呼ばれるようになったそうです。この造花ただものではなく、薬効のある草木で染められていて、漢方薬の五黄を含んだ印の牛玉札と同様、水やお湯に溶いて飲むこともあるのだそうです。
 薬師寺は、天武天皇が皇后の病気回復を願い、藤原京に建立された寺。平城遷都にともなって、718年、現在の場所に移築されたそうですが、災害などによって当時のまま残るのは東塔のみ、近年西塔、金堂、回廊、講堂が次々と再建され昔の「竜宮造り」の名を取り戻してきています。
 薬師寺は、講堂の屋根に娘が「生」の一字を書いて寄進した瓦がのっているかと思うと、訪れるたびについ屋根を見上げるお寺です。ですが、奈良に住んでいながらまだ一度もお水取り、花会式をこの目で見たことがありません。「いつでも行けるわ」という気でいると、なかなか行けないものです。

(※1) http://www.nara-yakushiji.com/contens/hanaesiki/index.html

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