また新たな赤字の材料がスタートした気がします。関西文化学術研究都市(学研都市)と幹線鉄道を結ぶ近鉄けいはんな線の開業です。
27年前、学研都市は 大阪・京都・奈良 三府県にまたがる15000haの広大な土地に、学術研究機関と住宅を建設する構想で始められました。ちょうどその区域に含まれる米穀店とお取り引きがあって、訪れるたびに変わっていく景色にその都度目を奪われたものです。国際電気通信基礎研究所、奈良県先端科学技術大学院大学、国立国会図書館関西西館や民間企業の研究施設などが矢継ぎ早に建設されていきました。ところがある時期から、景色があまり変わらなくなり、造成された広大な空き地がむなしく感じられるようになってきます。
庶民の足・鉄道はもちろん当初からの計画です。不動産会社の暗躍を避けてルートはひた隠しにされました。しかし当初の鳴り物入りに比べ、採算が危うくなると近鉄の単独から第三セクターになり、京都府の新田辺までの計画が住宅地に近い登美ヶ丘までの開業となりました。が、それでも近鉄の試算では採算ベースが7万人/日であるのに対し、5万人弱/日しか期待できないと聞きます。
多くの人に利用される施設は、採算性か、それともそれを度外視しても公共性かは意見が分かれるところで、将来を見据えた難しい決断です。第三セクターと聞くと聞こえは良いのですが、行き詰まったいずれもが自分の懐は痛まない公の取り組み方にあるように感じます。将来の延長を見越して造られた高架橋の末端が、いつまでも哀れな姿をさらしていることのないよう、県民として期待するところです。