今の事務所に移ったとき、MARTINSTOLL(※1)の椅子を購入しました。革張りでもなく布の背もたれクッションで、見た目も普通なのに「なぜこんなに高いのか」との思いだったのですが、評判に押され、近くの家具屋さんで一週間ほどの取り寄せでした。
車輪のスムースな動きを支えるベアリングの良さや、軸に組み込まれたエアクッションなどの機構は今も健在ですが、さすが20年を経ると肘当ての部分の布が解れ無惨な状態です。
先日ふと思い立ち、作りを眺めてみると、簡単に取り外せて自分でも修理ができそうです。果たして、自宅から端切れの布を持ってきて半日(ほとんどが接着剤の乾燥時間)で、立派に復元です。
昨今の風潮は使い捨て、デザインの良さで物選びをし、食品でなくともインスタントが重宝されます。でもこのドイツ製の椅子は元々の設計思想が違うようです。眺めていて分かったのですが、手のつけられない機構部分は別にして、すり切れてしまいそうな座面や背もたれ部分など個別に分解でき、素人でもそれなりの修理ができるような配慮がなされています。
メーカーとしては、適当に壊れてくれた方が、買い換え需要が見込めるというものですが、本当の物作りは、できるだけ永く使っていただける物を作ることではないでしょうか。
(※1) http://www.martinstoll.com/start.html