小さな親切心

 朝、工場に来ると店の前に鍵のかかっていない見知らぬ自転車が停めてあります。そんなに高価とは思えませんが、少なくとも家の自転車よりは新しいものです。
 昼になっても持ち主が現れず、これはきっとどこかで拝借して乗り捨てていったに違いない、盗られた人は困ってるだろうと小さな親切心で最寄りの警察に電話をします。
 しばらくして派出所からバイクで現れた警官、しげしげと眺めた後、「防犯登録がされてないから誰のものか特定できないし、盗難届が出てないから警察でも引き取れない」 「じゃ、どうすれば?」 「私有地じゃだめだけど、道路にあれば放置自転車として市が回収してくれる」 と、やおら立ち会いのもと、道路の歩道へと自転車を移動します。
 「小さな親切心」、警察官にとっては「余計な親切心」だったようです。

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