判決

 法律の解釈は庶民には難しく、そのためにテレビではバラエティー風にとらえた番組が当たるわけですが、去る6月1日の最高裁の判決は私にも納得のできるものです。
 能楽五流の一つ「喜多流」宗家の先代が保有していた能面や衣装など約210点の遺産をめぐる訴訟なのですが、すこし話がややこしく、亡くなった先代は能楽を継ぐ長男と次男に二分の一づつを遺言で分割、次男が亡くなり能楽とは無縁の相続人が遺言通り二分の一を要求、これに対し現宗家の長男は「宗家に代々伝わる能面・能衣装は一体として管理・利用されるべきだ」として争ったのです。代価でとの調停も実らず、高裁では原告側の要求通り競売にかけて売上金を二分する判決となりました。
 上告を受けた最高裁では、「現物を分割することができないとき」にあたるとして競売を命じた二審の判断は誤りだと差し戻したのです。
 素人考えでは、先代の遺言なのですから当然二分の一なのですが、文化的財産は分散すべきではないとの配慮が根底にあったものと思います。今までどれだけの文化遺産が分散され、歯がゆい思いをしてきたでしょうか。そのことを思うと将来を見据えた良い判決だと思います。

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