10/26(日)、神奈川県民ホールにてウィーン国立歌劇場によるオペラ『フィデリオ』を観てきました。感想は、すごいものを聴いて しまった、どうしよう、私、です。数少ないオペラ経験の中でも目からウロコの音楽体験で、私のオペラを観る目は180度変わってしまいました。
というのも、今まで私は、オペラは歌(劇)が主、オーケストラはそのサポート役で、オペラ歌手の歌声をオーケストラをバックに観るもののように感じていたからです。それが今回はオーケストラが歌手に負けじと思いっきり自己主張していて、しかも全く嫌味がありません。朗々たる歌声とオーケストラの音色が見事に合わさり物凄い迫力で観客に迫ってきます。
特に克目したのが、第二幕第一場から第二場へと場面変換する幕間で演奏された序曲でした。何度も形を変えて繰り返される主題の中で、フルートとバイオリンが掛け合い、クラリネットとバイオリンが掛け合い、ホルンが入り、トランペットが入り、コントラバスなどの低音組が睨みをきかせて、これでもか、これでもかというほどに場を盛り上げます。クラシックに疎い私にも伝わるくらいですから、個々人の力量は余程のものなのでしょう。音色はしっとりとしていて情熱的、バイオリンなど複数人で演奏する楽器もぴたりと音が合っていて、まるで1つの楽器が演奏しているかのようです。10分か15分程もあったでしょうか。ピッチがどんどん早くなり、音が幾重にも重なり大きくなって、感動も膨らみ続けます。盛り上がりが頂点に達し演奏が終わった頃には、感動のために観客は一体となっていて、劇場中に割れんばかりの拍手が響きました。オーケストラメンバーは立ち上がって拍手に応えてくれました。
なかなか鳴り止まない拍手がようやく静まって、第二幕第二場が演じられ、オペラは幕間の感動をそのままに大合唱で幕を閉じました。第一幕の話が動き始めるまでは長く感じたのですが、第二幕に入ってからは、あっという間の出来事でした。オーケストラが違うとこうも違うものかと感嘆させられましたが、これは(後から調べて知ったのですが)、今回観た演目自体が音楽を重視した演目だった事も理由かもしれません。
『芸は身を助ける』といいますが、なるほど、あれならば高い料金設定も納得できます。何度もはとても無理ですが、節約して、ここぞという時にまた是非観に行きたいものだと思いました。