どの業界もそうですが、季節の変わり目には展示会が開かれます。私共の食品業界も正に展示会シーズンです。問屋が広い会場を借り切り、そこに納入メーカーが一同に集まって、小さく仕切られたブースそれぞれにこの春・夏に販売を目論む商品を展示して、問屋の得意先に説明し売り込みます。得意先は目にとまった商品を手に取りサンプルとして持ち帰ったり、値引きなどの条件をメーカーと商談します。
担当セールスは長時間拘束され、費用に見合う売上げを会社からは要求される大変な何日間ですが、楽しみの一つは他のメーカーとの商品の物々交換です。最終日、終礼と共に(その前からそそくさと)皆が一斉に自社のサンプルを持ち込んでは目当ての商品を「これ、いただいていいですか?」と個々に交換の始まりです。セールス同士も顔見知りとなり、お互い様で拒む人がないのが常です。
ここに登場するのが、「展示会あらし」です。まるで関係のない人がこの時間を見越して会場に入り、「サンプルいただいていいですか?」と各メーカーの展示品の一部をちゃっかりいただいていきます。もちろん交換する商品は持ちません。駐車場でも、片づけを済ませ車に積み込むセールスに、「サンプルいただいていいですか?」と待ちかまえています。
「もらっていいですか?」でもらうのですから犯罪の立件は難しく、いわばもらい得、情報は広まるもので集団で来るのもいるとか。
「なかなか良いアイデアではないか」と頭の隅をよぎった方、お気をつけください。最近は会場のガードマンがこれを見越して待ちかまえています。