産業界、特に中小零細企業の課題の一つは、技術の伝承です。その事や人手不足を補う手立てがディジタル技術ですが、技術ではまだまだ技術者の手腕の方が上をいくようです。
伝承問題は、庶民の身近な所にもあります。タクシーに乗ると、運転手がまずやることは、行き先をカーナビにセットすることです。さすがにこの田舎町ではお目にかかりませんが、都会では多いようです。
先輩達に道の指導を受けるまでもなく、カーナビの使い方さえ覚えれば即戦力ですから、タクシー会社にとっても願ったりですが、お客さんには優しくありません。脇道を熟知した運転手さんだと、近道を走ってくれたり、渋滞を避け早く着くようにしてくれたりしたものですが、もうそんな期待はできません。昔は知らない住所に行くにも、タクシーに乗れば連れて行ってくれるとの安心感がありましたが、カーナビで「この辺り」と降ろされると、うろうろ探し回らねばなりません。
産業界へのディジタル技術の浸透は、品質の統一や生産性向上については格段の進歩ですが、技術の伝承面ではむしろ後退です。産業飽和状態の今、「カーナビを使わないタクシー会社」といった技術を前面に出す会社の再出番かも知れません。