旅行記 その9

 水は灰色、異臭を放っています。生活排水がすべてここに流れ込んでいるのです。船を操るのは若い男性と手伝いの子供の二人。後方長く伸びたプロペラシャフトを水中に下ろし出発。船の混雑で動き出すまでがなかなか。動き出したかと思えば、スクリューにビニールシート類のゴミが絡まって停止。水路の両側のマングロウブの下枝にも、ビニールの切れ端がいっぱいついています。
 船は水路をスピードを上げ、戻り船とのすれ違いではスピードを下げして進みます。それでも水面ぎりぎりの小さな船には相手の水しぶきが飛んできます。水の色は茶色に変わり、筏の上に乗ったヤシの葉覆きの住居が見えてきます。エンジンの修理をしたり、豚を飼っていたりしているのが見られます。もちろん本業は漁師です。学校までもがひときわ大きく浮かんでいます。
 マングローブの水路を抜けると広大な湖が広がり、振り返ると岸辺周りに粗末な屋寝付きの筏が数多く点在します。ボートが着くのはひときわ大きな筏。観光客向けのおみやげやさんです。餌を蒔かれて、ナマズがその餌に群がっています。秋篠の宮もナマズの研究でこの地を訪れられたとか。この湖に生息するワニの生け簀もあり、鰐皮ようとして中国に出すそうです。遙か遠くの湖の中程に鉄塔が見え、乾期のさなかはそこまでこの筏も移動するとか。雨期には澄んでくる水も今は茶色に濁っているのですが、槽に溜め沈殿させて上澄みを飲み水にも使うそうです。が、「ほれ、こんなにきれいになります」と示された水もとても飲めそうにはありません。
 この観光筏の周りにもたらい状のプラスチック容器にのって櫂で上手に進みながら、指を一本立て「ワンダラー」と子供が寄ってきます。戻ろうとボートに戻っても周りにその子供達や、小さなボートの舳先から女の子がお金をせびります。その後ろにはその子達の母親とおぼしき女性がいて、なんとも身につまされる光景です。

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