旅行記 その6

 遂に来ました、アンコールワットです。タ・プロームと違ってこちらはできるだけ修理を手がけていて、今も日本や中国の援助で修理を継続しています。ただ働いている人がダラダラしているように見えるのは、お国柄でしょうか。
 環濠をまたぐ形の西参道の既に修復されている右側を進むと、西塔門が次第に近ずいて来ます。三つの尖塔の上部はいずれも崩落していますが、それでもここがアンコールワットの楼門だとの威厳を放っています。楼門をくぐると出口を額縁のようにして、回廊に囲まれた中央祠堂の尖塔が目の当たりに見えます。更に参道を進むと左右に経堂があり左側は日本の援助で修理が終わったばかり、新しくはめ込んだ石の色が違うのですが、建造当初はこの色だったとか。参道の左右は今は草原ですが当時は水がたたえられていたそうで、その荘厳さが想像できます。左右にある聖池には僅かばかりの水が残っていて、あの絵はがきで見る逆さアンコールを写真に収めます。
 この寺院はそれぞれ方形の回廊で囲まれた三層構造で、一層目、二層目、三層目と順次階段で上っていく構造です。ガイドさんはまず、第一回廊の見事なレリーフに案内し、説明をしてくれます。神話に基づく彫刻、天国・現世・地獄の図、一部には金箔のあとも残ります。興味を持つ人ならば、ここだけで何日も通い詰めることでしょう。
 昼食後すぐの観光客が避ける時間帯のため、人がうまる回廊も観光客はまばらで、ゆっくりと説明に聞き入ります。が、やはり記憶し切れません。第二回廊を過ぎ、いよいよ最上階第三回廊です。噂には聞いていましたが、目の前の階段はまるで壁、幅もさほどなくすり減っている上に、所々かけたりしています。でもこれを上らなければ来た意味がありません。横の石壁づたいに、最初は案外楽だなと思いながら昇りますが、途中で登り切れるだろうかと不安になってきます。その横をガイドさんが、ひょいひょいと昇っていきます。最後はこのガイドさんに引っ張り上げてもらい、無事達成です。やはりというか、年に何人もの人が落ち、死者も出るそうです。
 登り切った第三回廊の四隅には尖塔がそびえ、中央に位置する祠堂にはひときわ高く尖塔がそびえています。遠くからアンコールワットを見たときの塔は、この五つの塔なのです。
 さて昇ったからには降りねばなりません。でもご安心ください。上った階段とは別に、正面の階段には細いながらガイド棒が付けられています。混雑するときは下り専用となるのだそうですが、込み合っていない今も、順に一列になってその棒を、汗で滑るのを気にしながら、つたって下ります。遺跡の見学の他にひと味違った達成感があるのも、このアンコールワットの魅力でしょうか。

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