ここ奈良県は和歌山県に次いで柿の生産量が多いところ、そのこともあって、この季節になると知り合いに大和柿を贈ったりします。同じ垣内の娘さんが柿農家に嫁ぎ懇意にしていただいているのも、理由の一つです。贈る方は別として、庭木として柿の木を植えている家も多いですし、柿山をもつ親戚筋もあることから、この時期、多くの柿をいただきます。
あまつある果物の中で、柿は美味しいという部類に入るかどうか疑問ですが、どういう訳か私は柿が好きで、食後自分で皮をむいて食べるほどです。子供の頃、しょっちゅう食べていたスイカは今はその青臭さが嫌でほとんど食べませんが、柿の木に登って取って食べていた柿を、今も飽きず食べているのが自分でも不思議です。
柿にはほかの果物にない特長があります。渋柿です。木に登って取ったはいいが、一かぶりして渋かったときの思い、先輩と同様「これは誰かをはめてやろう」、伝統とは受け継がれるものです。今はもうそんなことをする子もなく、伝統は途絶えてしまったでしょう。
その渋柿も原因のタンニンを不溶性に変える渋抜きで、普通に甘い柿よりも一層甘くなったりします。方向を誤った人があることをきっかけに立ち直り、人より一層秀でるようになった事に似ている気がします。ある人が自分のことを「渋柿人生」と評していたのを思い出します。
冷気にさらしじわじわとタンニンを変容せしめる干し柿、もう待ち遠しい限りです。