消えゆく情景

 またまたこの地ならではの情景がなくなります。新聞記事に依ると、来る3月13日で三重県松阪と大阪上本町とを結ぶ「鮮魚列車」がなくなるとのこと。
 この地ではJRもありますが、近畿日本鉄道が主たる私達の足です。かつてホームで電車を待っていると見慣れた車両ながらなにか様子が違う列車が入ってきます。時間調整なのか停車はしますがドアは開きません。中を覗くと両窓際のシートにおじさん、おばさん達が寝っ転がっています。側には肩に掛ける幅広の紐がついた金属製の四角い箱が時には二段積みで置いてあります。後で知ったのですが、これが「鮮魚列車」だったのです。三重県の伊勢・志摩エリアでとれた魚介類をその朝大阪まで運び売りさばく行商人専用の列車です。
 1963年に始まったとのことですからそこそこ長い歴史です。専用列車を仕立てるのですから当時は数多くの行商人がおられたのでしょう。今はトラック輸送の時代、大量に輸送し遠く離れた地域でも鮮魚を売りにするお店も増えましたから、行商人も減り廃止もやむを得ないところです。でも知らない人に見せて「この電車一体何?」と驚く顔が見られないのは残念です。

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