この家業を引き継ぐ前、会社勤めで私は、いわゆる技術屋の端くれでした。私の感じていたところでは、技術屋にはおおむね共通項があり、話し下手でかみ砕いての説明ができず、相手構わず専門用語が飛び出す一方、仕事にはかたくなに(例えそれが営業マンの意にそぐわなくとも)正直でした。
性能・機能を取り決めた仕様書を満たす設計が仕事ですから、検査データの数値で示される自分のミスは正直に認め、できない事柄は最初からできないと仕様書作りに反映させたものです。ところが今回底のない広がりをみせている強度偽装には、私の持つ技術屋イメージが微塵もありません。インタビューに応える技術屋あがりと見られる人の発言にも、胡散臭さを感じます。
私の技術屋イメージが古いのでしょうか、それとも時代が進んで収得すべき技術の第一は、世渡り術になってしまったのでしょうか。