黒澤明監督没後10年

 黒澤明監督没後10年ということで、NHKBSで全30本の黒澤作品を放映しています。昨日はそれに合わせ、関係者でないと知り得ない秘話を交えた特別番組で、思わず長時間観てしまいました。ご覧になった黒澤ファンも多かったことでしょう。
 内でも感じ入ったのは、脚本共同執筆の橋本忍氏の語りです。アメリカの番組アクターズ・スタジオを真似た構成で、映画作りを目指す若者達の前で、アナウンサーが橋本氏に質問を投げかけ、若者達の質問にも答える趣向。
 脚本家とは正にストーリーテラー、90歳の高齢とは思えない語り口で、「七人の侍」脚本制作に至る過程に、引き込まれてしまいました。
 「侍の一日」を忠実に表したいとの監督の依頼に、普段と変わらずお城に出仕した侍が、些細な過ちでその日の内に切腹をするという脚本を書き上げたのですが、介錯を依頼する友とその日共にする手弁当での昼食シーンが、史実に裏付けがないと氏自らボツにし(ボツにするにはもったいない程の情景溢れる語りです)、次の依頼、剣豪のオムニバスは「起承転結がないとやっぱりダメだ」と監督自らがボツ。
 そこでの雑談で、「一般の武者修行者は生活の糧をどうしてたのかな?」 「道場に立ち会いを申し込めばその夜の寝食と次の日の朝食、それに昼飯を世話してくれます」 「道場が無い所では?」 「お寺に駆け込めば同じ世話をしてくれます」 「道場もお寺も無い所では?」 「農民が襲撃を逃れるため武士を泊めてくれます」 「農民が武士を雇う、うん、できたな」 「できましたね、何人にしましょう?」 ってことで、「七人の侍」の誕生です。
 この後も、脚本作成の秘話、膨らむ制作費秘話と話が続くのですが、ここまでで既に話が長くなってしまいました。これで私の「七人の侍」への思い入れも、お分かりいただけたでしょう。ご覧になっていない方は、次の再放送の時にはお見逃しになりませんように。

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