手延べそうめんづくりはお天気次第

経験と勘
 霜の朝は、霜が早くとけたら翌日は雨。9時、10時まで残っていたら晴れます。テレビの天気予報もありますが、地域の天気はその土地じゃないとわからないこともあります。ですから、素麺師は永年の経験から三輪山にかかる雲で天気を判断するのです。三輪山の東南、巽(たつみ)の方角が長谷寺で、北が奈良です。奈良に向かって雲が流れる「奈良参り」は雨、雲が長谷寺の観音さんに向かっていたらお天気です。もやがかかったら風のない証拠。湿気が多くて素麺はよう乾きません。けれど、長谷寺の方向に吹く北西の乾風は上天気のしるしですから素麺づくりには1番ですが、強すぎても機(はた)にかけられた素麺が切れてしまいますし、干し機が倒れて木組みまで裂けてしまうこともあります。そんな日には急いで納屋に取り込まなければいけません。

ようず
 しかし、素麺づくりの大敵は「ようず」です。湿気をたっぷり含んだ南風で、一冬に2、3回見舞われます。何の前触れもなく急に気温があがったかと思うと、乾燥しかけた素麺が急速に水分を含んでふやけてしまうのです。これは扇風機であおいでもおいつくものじゃありません。また、お彼岸がすむと南風が吹き始めよく乾くのですが乾きすぎるのも困りもの。素麺がポロポロと折れてしまいます。東風(こち)も同じです。
三輪山が春霞にかすむ頃、素麺づくりは終わりに近づきます。